為替と国力は関係ない『弱い日本の強い円』【書評】

2021年1月29日

2020年の3月、資産バブルの崩壊やら空前絶後の量的緩和やらで為替がはげしく変動しています。

それを見てたら頭が混乱してきたので、復習もかねて佐々木融『弱い日本の強い円』(日経プレミアシリーズ)を再読しました。

僕が知る限り、外国為替の解説書のなかで、もっとも深くわかりやすい本。

為替で頭が混乱した人は、本書を読むのがおすすめです。

為替と国力は関係ない

為替というと、国力と関係があるような気がしますよね。強い国の通貨は強く、弱い国の通貨は弱いみたいな。

だから、国力が着実に衰えつつある日本の通貨が強い状況をみると(世界経済が動揺すると円高になるとか)、不思議な気持ちになります。

しかし著者によると、為替が国力を反映するというのはただの迷信なのですね。

 

では為替はどのような原因によって変動するのか?

本書ではそれを、長期・中期・短期の3つのスパンにわけて説明していきます。

 

長期の国際為替

まずは長期の為替変動から。長期というのは10年とか20年とかのスパンです。

これを決定するのはインフレ率です。物価の上昇率によって為替が動く。

インフレ率の高い国の通貨は下落し、インフレ率の低い国の通貨は上昇します。

 

日本は長期的な円高傾向にあるのは、これが原因です。他に類のないような低インフレが長く続いていますから、円高傾向もそれだけ長い。

インフレ率の国際的状況が変わらなければ、円高傾向はずっと続くということですね。国力の衰退や人口減少などは、直接の関係はありません。

 

中期の国際為替

次は中期の為替変動。中期というのは5年程度のスパンです。

これを決定するのは貿易や投資による資金の流れです。貿易や投資で稼いでいる国の通貨は買われ(高くなる)、逆の通貨は売られます(低くなる)。

これも日本の円高傾向を後押しますね。

日本には今まで積み上げてきた膨大な経常黒字があり、それを海外に投資しています。そこから発生した利益を日本にもちかえる際に、外国通貨の売りと、円の買いが発生します。これが円高をもたらすというわけです。

アメリカのドルには逆の力が恒常的にはたらき、ドル安をつねに後押ししています。

 

短期の国際為替

次は短期の為替変動。

ここには投機筋など個々のプレイヤーの動きが影響してきます。

短期の為替変動を長期の要因で説明するのは慎重になったほうがいい、著者はそうアドバイスしています。ニュースとかでしょっちゅうこの誤りが発生しているとのこと。

また、短期の値動きにどれだけ長期の要因が関わっているかを判断するのに、チャートが使えると。チャート=占いというイメージでしたが、見方が変わります。

 

危機の際に円高になるのはなぜ?

世界経済が動揺すると、たいてい円高になりますよね。そして「円が信用されているからだ」みたいな解説がなされる。

しかし本書によると、その説明はズレているんですね。

危機の際に円が買われるのは、日本による海外への投資が巻き戻されるからです。

日本は膨大な対外投資を行っていますから、世界経済が危機に陥ると、巻き戻される投資が強烈な円買いをもたらすというわけです。

それを見越した投資家たちの円買いはあるかもしれませんけどね。

 

古い本だけど今でも有益

『弱い日本の強い円』の発売は2011年。だいぶ古い本です。

2011年というと東日本大震災が起こった年でもあり、なんか時事的な内容なのかなみたいなイメージが湧くかと思います。今読んでも当てはまらないことが多いんじゃないかとか。

しかし本書の内容はきわめて本質的で、今読んでも得るものが多いです。

為替を勉強するなら相変わらずおすすめの一冊といえるでしょう。