スタヴローギンのモデルはスペシネフ【ドストエフスキーの悪霊】

2020年1月12日ドストエフスキー

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グロスマンの『ドストエフスキイ』(筑摩書房)を読んでいたら、スタヴローギンのモデルとされる人物が登場しました。

その男の名はスペシネフ。ペトラシェフスキーの会合でドストエフスキーが親しくなった人物です。

ペトラシェフスキーの会合というのは、ロシアに革命を起こそうとする一味の集まり。ドストエフスキーがこれに関与したために、当局から逮捕されてしまったことは有名ですね。

 

このスペシネフが強烈なカリスマだったらしい。ペトラシェフスキーなど相手にならないと言われています。

あのバクーニンがスペシネフについて語っていますので、少し引用してみましょう。

彼はいろんな点で注目すべき人物です。聡明で、金持ちで、教養がある上に美男子で、顔立ちはまことに気品があるし、落ち着き払って冷たい感じではあるけれども、落ち着いた力というものはみなそうですが、信頼感を植え付けるような、そういう容貌です。要するに、足の先から頭のてっぺんまでジェントルマンなのです。

 

バクーニンのスペシネフ評はこの後も続くのですが、ドストエフスキーの読者なら、あるキャラクターが想起されたかと思います。

そう、いかにもスタヴローギンなんですよね。

実際、著者のグロスマンも、ドストエフスキーはスペシネフをモデルにしてスタヴローギンを創造したと言い切っています。

 

ドストエフスキーはこのスペシネフに、精神的に支配されてしまったらしい。この人物から離れたい、しかし離れることができない、という精神状況。

後年になっても、このことがトラウマとして記憶に刻まれていたそうです。

『悪霊』でピョートルやシャートフやキリーロフは謎の精神的支配力をスタヴローギンから受け続けますが、あれはドストエフスキーの実体験に基づいた描写なのですね。だから迫力があるのかもしれない。

スペシネフの思想

グロスマンの『ドストエフスキイ』には、スペシネフの思想内容についても興味深い記述が見られます。

スペシネフはキリスト教の歴史を研究し、古代のキリスト教団の活動および影響力に驚嘆したらしい。

そして、自らの社会的野望(ロシアに革命を起こすこと)を実現するためには、このキリスト教団に類する組織を作り上げる必要がある、と考えていたというのです。

 

このスペシネフの考えを辿っていくと、『悪霊』の登場人物たちが企てようとしている陰謀が見えてきますね。

さらに、『カラマーゾフの兄弟』のイワンの将来をも暗示しているかもしれません。