日本の英語教育こんなにヤバい『英語教育の危機』【書評】

2021年1月29日

日本の英語教育は、大変革の前夜にあります。

その変化がいかにヤバいものであるかをこれでもかと綴った本が、鳥飼玖美子『英語教育の危機』(ちくま新書)です。

僕が世間知らずなだけかもしれませんが、本書を読んで初めて知ることが多く、相当な衝撃を受けましたね。

小学校に英語教育が導入されるぐらいの知識しかなかったのですが、それをはるかに超える事態が進行しているようです。

 

全体の構成は次の通り。

・英語教育は今、どうなっているのか?
・英語教育「改革」史
・2020年からの英語教育
・大学入試はどうなるのか?
・「コミュニケーションに使える英語」を目指して

 

堅い文章で書かれた資料を引用しまくっているので、わりと読みにくい新書です。著者自身の文章もけっこう難しいですね。

しかし全体の構成はスッキリとしていて見通しがよく、本のメッセージを汲み取ることは容易です。

 

大きなポイントは次の3つですね。

・今の学生は英語を英語で教わっている
・小学校5年生から中学英語のような本格的な勉強が始まる
・大学入試に民間の英語試験が導入される

 

英語で英語を教える衝撃

実は今の高校生は、英語で英語を教わっています。2013年からこのようなシステムになりました。これ知っていましたか?僕は本書で初めて知りました。

また2021年からは、中学でも英語の授業が英語で行われることになります。

著者はこれを問題視しています。実際、2013年以降の高校生に英語能力の伸びは見られないそうです。

 

とくに思うのは、教師が大変そうということですね。ネイティブではなく、普通の日本人が英語で英語を教えるのですから。英語教師でも、スラスラ言葉が出てくる人は全体の1割もいないと思います。めちゃくちゃ苦労するんじゃないか。そして、授業の内容が浅くなりそう。

こうなると英語ができない生徒は今まで以上についていけなくなりそうだし、できる生徒は授業内容の低レベルさにイライラしそう。かなりの地獄絵図が思い浮かびます。

教師の英語力は伸びそう

でもこれ、教師側にとってはめちゃくちゃ効果的な英語トレーニングになりそうですよね。英語漬けにならざるをえない環境がしょっちゅう与えられるわけですから、教師側の英語力はぐんぐん伸びていきそう。

英語力を伸ばしたいという人は、これからは英語教師になるのも一つの手かもしれません。言うまでもなく、人材も圧倒的に不足していますし。

ただあまりに実力が低いと、教わる側の生徒が気の毒なので、そこは自重してほしいですが。

いずれにせよ、生徒側が停滞するのに対して、教師側の英語力がぐんぐん伸びるという、本来の趣旨とはだいぶかけ離れた事態が予想されます。

 

英語教育2つの大改革

外部から言われるまでもなく、文科省は日本の英語教育をコミュニケーション重視に切り替えようと苦心し、改革につぐ改革を行ってきました(そして成果はありませんでした)。

いつまでたっても日本人の英語力が向上しないことに業を煮やした文科省は、以下の二つの大改革に踏み切ることにしたようです。

・小学校に英語教育を導入
・大学入試に民間の英語試験を導入

 

小学校から英語教育を始めるというのは有名ですし、さすがに僕も聞いたことあったのですが、2番目がむちゃくちゃ衝撃でしたね。

大学入試の英語に、民間の英語試験を導入するというのです。要するに英検とかTOEICとかTOEFLとかですね。

どれを受けるかは自由だとか。そして試験の料金は自費とのこと。試験対策用のテキストや過去問も自費…なんでしょうね(お金持ちでかつ教育熱心な家庭には、世界標準のTOEFL受験をオススメしておきます)。

 

これどういう事態になるのかちょっと予想がつきませんよね。現場も混乱しているようです。

大学入試に有利な試験はどれかと高校側は知恵を巡らせ、試験対策の授業を模索しているらしい。大学側も、どの試験がもっとも効果的なのかを模索している。そして試験を提供する民間の会社は、「うちの試験がベストですよ」と売り込みをしかけているという。

こうなると、学校の英語の授業は民間の試験対策に収束していきそうです。よく大人がTOEICの勉強をしていますが、あれを高校生みんながやるわけですね。

なんか、聞いているだけで英語が嫌いになってきますね。こういう世界でしか英語と出会えない生徒は気の毒です。

英語学習

Posted by chaco