司馬遼太郎と井筒俊彦の対談『十六の話』【書評】

2020年3月1日

司馬遼太郎の『十六の話』(中公文庫)を読みました。

エッセイを集めた本。16本の文章が収録されているから「十六の話」というわけです。


井筒俊彦との対談が面白い

本書の白眉は、巻末におまけとして収録されている、井筒俊彦との対談「二十世紀末の闇と光」。

これがめちゃくちゃ面白い。

井筒俊彦といえば、20世紀の東洋を代表する大哲学者。イスラム研究でも有名ですね。『イスラーム思想史』はわかりやすさと奥深さを兼ね備えた名著でした。

本書の対談では井筒の本領が発揮され、面白いエピソードが連発されます。

たとえば以下のような。

 

・外国語は数ヵ月で読めるようになるが、アラビア語だけはそうはいかなかった
・アラビア語の先生は重要な本をすべて暗記していた
・大川周明からアラビア語の本を借りて先生のところへもっていった
・モンゴル帝国に制圧されてから、イスラム哲学の性格がガラッと変わった
・哲学の発展のためにはメタ言語を創造する必要がある
・空海はギリシア哲学の影響を受けていたのではないか

 

イスラム世界の学者たちの異常な能力が笑えます。

また井筒俊彦と大川周明に親交があったとは驚き。大川は若き井筒のことを高く評価していたらしい。

 

ちなみに司馬遼太郎の著作のなかでは『空海の風景』に感心している様子。

あれをさらに展開させていったら日本的哲学ができあがるのではないか、と発言しています。

ぼくも司馬遼太郎の作品では『空海の風景』がいちばん好きかもしれない。

 

分量は40ページほどですが、この対談は必読ですね。

 

井筒俊彦の著作にもこの対談は入ってる

ちなみにこの対談は井筒俊彦の『コスモスとアンチコスモス』(岩波文庫)にも収録されています。


最近、岩波文庫は井筒俊彦の著作を次々と文庫化していますね。

本書の対談に触発されて、『神秘哲学』などの重要著作を読んでみたくなりました。