ポストモダンとポストモダニズムの違い『郵便的不安たち』【書評】

2021年3月26日

東浩紀の『郵便的不安たち』(朝日文庫)を読みました。

デビュー時から『動物化するポストモダン』直前までのエッセイを集めた本です。

取り扱われる題材は哲学から文学、アニメまでかなり雑多。

『存在論的、郵便的』の解説、ソルジェニーツィン論、夏目漱石論、庵野秀明(エヴァンゲリオン)論、柄谷行人論、などなど。

今でこそ違和感ありませんが、こういうスタイルは東浩紀が生み出したものですね。本書の刊行時点ではそうとうなインパクトがあっただろうと思います。

現在では河出文庫から新版が出ているので、買うならそっちにしたほうがいいと思います。

朝日文庫バージョンの特典としては、解説を斎藤環が書いている点ですかね。

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ポストモダンとポストモダニズムを区別せよ

本書でもっとも印象的なのは「ポストモダン再考」という論考。

社会状況を表す言葉であるポストモダンと、文化や思想の内容を表す言葉であるポストモダニズムを区別するよう主張する論考です。

東浩紀によると、ポストモダニズムは90年代の時点で完全に終わっています。

しかし一方で、社会のポストモダン化はますます深まっている。

ポストモダニズムとポストモダンをごっちゃにしたままだと、今のポストモダン社会をうまく語ることができない。

したがってポストモダン社会を分析するためにこそ、ポストモダニズムにけりをつける必要がある。

このような論調です。

 

東浩紀はポストモダニズムを次のように定義しています。非常に明快。

ポストモダニズムとはおそらく、二十世紀の後半、「近代」と「ポストモダン」という二つの文化的複合体のあいだで引き裂かれ、なんとかその両者を繋ごうとした移行期のイデオロギーだったと整理されることになるだろう。(東浩紀「ポストモダン再考―棲み分ける批評Ⅱ」)

要するに、1970年代に始まるながーいポストモンダン期の最初の30年間を特徴づける時代精神ないしイデオロギーが、ポストモダニズムだったわけですね。

 

ポストモダニズムをフランス、アメリカ、日本の3つのタイプにわけて論じるところも啓発的。

ちなみに日本の1980年代に流行したポストモダニズムはアメリカを経由して入ってきたものです。

フランスやアメリカと違い、批判的言説としてのポストモンダン思想が日本の社会をそのまま肯定してしまったところがミソ。このへんは柄谷行人によるポストモダン思想の批判が的確で、東も明らかにそれを参照しながら書いてます。

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ポストモダニズムやポストモダン社会についての見通しを得たいと望んでいるひとは、東浩紀の本論を読んでおくと非常にためになると思います。