『毛沢東 日本軍と共謀した男』中国共産党が国民党に勝てた理由【書評】

2020年11月6日

遠藤誉の『毛沢東 日本軍と共謀した男』(新潮新書)を読みました。

著者は物理学者にして中国問題の専門家という不思議な経歴の人。子どもの頃を中国で過ごしており、初等教育も中国で受けたようです。

本書の内容は、国共合作の裏で毛沢東が日本軍と共謀していたというもの。

蒋介石だけに対日抗戦をさせ、共産党は力を温存したまま逃げ回った。国民党と日本軍をともに疲弊させ共産党が中国を支配するためですね。

そして第二次世界大戦の終結後、共産党は疲弊した国民党との内戦に勝利し、毛沢東の目論見通りに中国を支配することになった、というわけです。

なぜ中国共産党が国民党に勝てたのか、以前から不思議に思っていました。ふつうに考えたら国民党が勝ちますからね。その謎が少し解けた気がします。

陰謀論めいた本ではなく、あくまでも資料の読み込みによる実証性をベースにした本。現在は中国でもこの手の話が論じられ始めているらしい。

著者の政治的な姿勢がやや疲れますが(共産党けしからん!的なムードが全面に出てくるタイプ)、内容は読む価値ありです。

しかしもう一つ不思議に思っていることがあって、それは、なぜアメリカは共産党を勝たせたのだろうということなんですよね。

アメリカはその国家方針からいって、もっと蒋介石の国民党を援助して当然だったのではないでしょうか?なぜ、みすみす共産党を勝たせたのか。

ドイツや日本の戦後処理でそれどころじゃなかったのかもしれませんが…

社会主義のもとで高揚するナショナリズム

共産党が中国を支配したら、中国はソ連の支配下に置かれると蒋介石は恐れていました。実際、毛沢東の策略も、ある程度まではコミンテルンの指示に沿ったものでした。

しかし毛沢東はやがてソ連とも仲違いします。さらには社会主義を換骨奪胎し、それを中国化。

そして鄧小平以降の経済成長は周知の通りです。皮肉なことに、共産党のもとで中国は一つの国としてまとまり、復活を遂げたのでした。現在進行系で展開される、中国史のハイライトのひとつです。

社会主義というのはもともとインターナショナルな性格をもち、ナショナリズムを否定する側面が強いのです。

国や民族ではなく、労働者と資本家の区別で世界を見るわけですから。どんな国の人間であるかは問わない、労働者であるからには資本家に対抗して団結しよう、と。

しかし中国の場合は社会主義政府のもとでナショナリズムが高揚し、しまいには資本主義を採用して国力をブーストさせまくっている。

歴史というのはなにが起こるかわからないものです。

歴史の本

Posted by chaco