佐藤優『獄中記』なぜかやる気が湧いてくる本【書評】

2021年2月8日

佐藤優の『獄中記』(岩波現代文庫)を読みました。

2002年に国策捜査で逮捕された佐藤が、独房のなかで書き綴ったノートをまとめたものです。

昔、単行本を図書館で借りて読んだことがあります。読み返したくなったので今回は文庫版を購入。

佐藤には数多くのベストセラーがありますが、僕は本書がナンバーワンだと思っています(次が『読書の技法』)。

本書のなにがそんなに面白いのか?独房で勉学に励む佐藤の姿が、です。

神学、哲学、語学(ラテン語、ドイツ語、チェコ語など)と、佐藤は独りの時間を活かして勉学に励みまくります。

その姿が読者をモチベートするのです。なんかやる気が湧いてくる。

僕が思うに、佐藤優の最大の長所は人をモチベートする才能にあります。他人をやる気にさせることができるのですね。そういう力をもった人ってたまにいますよね。佐藤はその一人だと思う。

彼の書く本が売れるいちばんの秘訣は、実はここにあると思います。

実際、僕は読書欲や語学の学習欲が停滞したときに、佐藤優の本を読むことが多いですね。彼のエネルギーに感化されて、やる気が湧いてくるからです。

 

本書の巻末には佐藤が獄中で読んだ本がリストアップされています。興味深いものをピックアップすると以下の通り。

 

・ハーバーマス『公共性の構造転換』『コミュニケーション的行為の理論』

・アンダーソン『想像の共同体』

・ゲルナー『民族とナショナリズム』

・スミス『ネイションとエスニシティー』

・バルト『キリスト教倫理』

・フーコー『監獄の誕生』

・ポパー『開かれた社会とその敵』

・ヘーゲル『精神現象学』

・柄谷行人『ヒューモアとしての唯物論』

 

以上は全体のごく一部ですが、傾向がわかりますよね。

それから語学書(ラテン語、ドイツ語、チェコ語)を猛烈に読んでいます。それから聖書ですね。

読了した本に対するコメントもけっこう示唆に富みます。たとえばポパーは限りなく水準が低いとか、カントは官僚的でヘーゲルは政治家的だとか。

 

独房での拘束期間は512日。アルバニア語と数学の勉強に手を付けられなかったのが残念とのことです。

岩波現代文庫バージョンには文庫オリジナルの後書きが付いています。ページ数は約80ページ。内容は獄中の生活に関するものです。

地震が起きたらどうするとか、冷房がどうなってるかとか、昼寝の時間帯がどうだとか、食べ物はどんなものが出るかとか。かなり具体的な記述になっています。