中国の100年マラソン『China 2049』【書評】

2021年2月7日

マイケル・ピルズベリーの『China 2049 秘密裏に遂行される世界覇権100年戦略』を読みました。

原書のタイトルはThe Hundred Year Marathon。直訳すると100年マラソン。

中華人民共和国の成立が1949年ですから、100周年の2049年までにアメリカを追い抜いて覇権国になろうという中国の野望のことを100年マラソンといいます。

アメリカはつい最近までこの野望に気づかなかったそう。著者はニクソン大統領政権時からずっと中国と関係してきた外交官ですが、その著者も気づかなかったといいます。

これは相手に自分を小さく見せる中国の技で、三国時代からの伝統です。本書の前半ではそれが事細かに分析されています。

ちなみに中国と違ってソ連はこれに失敗し、アメリカとの軍拡競争に突入して自壊しました。

 

中国の巧みなレアルポリティクス

中国は外交が上手いです。

最初はソ連から援助を引き出しました。西側陣営に対抗するため、ソ連は中国にさまざまな支援を行います。

軍事やテクノロジーをはじめ、中華人民共和国の基礎はソ連が作ったと言われることすらあるそう。

しかしスターリンが死ぬと両国の関係は悪化します。

 

すると中国は米ソ冷戦を利用する形で、今度はアメリカから援助を引き出します。

ソ連に対抗するためのパートナーとしてアメリカに接近。ニクソン大統領とキッシンジャー国務長官のコンビは、中国に対ソ連用の利用価値を見出します。ここに米中接近が実現しました。

その後長らく続く中国とアメリカのパートナーシップの成立です。本書では、アメリカの戦争に中国が武器を提供していたことなどが暴露されています。

中国はアメリカから経済、軍事など多大な支援を引き出しました。また留学生をアメリカに送り込み、人材の育成にも努めます。これが現在の繁栄につながっています。

 

中国けしからんという論調の本ですが、僕などはむしろ「中国うまいなあ」と感心してしまいました。

キッシンジャーがよく指摘することですが、こういうレアルポリティクス(現実主義政治)に弱いのがアメリカの特徴です。

 

なぜ中国は高圧的な態度を露わにしたのか?

気になるのは、最近の中国がなぜ高圧的な態度に変わったのかということ。習近平は覇権を目指すことを隠そうとしないですよね。

そして案の定、アメリカからの反発を呼び込んでしまっています。米国議会はトランプをせっついて、対中国向けの強硬路線を取らせています。

覇権を目指すにしても、このような高圧的な態度を取るべきではなかったのではないでしょうか?能ある鷹は爪隠すという方針でやってきたのに、なぜ方針を転換してしまったのか。

もし中国がソ連の後を追って自壊するとしたら、習近平らタカ派の責任はそうとう大きなものになると思われます。

 

といっても将来の中国は民主的な連邦制になるとの予測もあり、一度崩れたからといってそのままフェイドアウトはしないかもしれません。

むしろもっと強くなる可能性もありますね。いくつかに分かれた州のうち、現在の日本と同じかそれ以上の強さの州が何個もある、という状況が考えられます。

ピルズベリーの中国観は極端から極端に振れすぎている感が無きにしもあらず。しかし、現在の日本によくあるような粗悪な中国本とは一線を画す内容だとは思います。

第二次世界大戦以降の米中外交史を学ぶ上でも役に立つ本です。