新鮮さがみなぎる良作 夏目漱石『三四郎』【書評】

2021年2月5日

夏目漱石初期の良作、『三四郎』を初めて読みました。

『坊っちゃん』や『吾輩は猫である』に比べると影が薄いものの、独特の空気感をただよわせた名作です。

丸谷才一によると、この本は日本におけるモダニズム小説の先駆けだといいます。それを意識して読んでみると、とくに前半にその性格が色濃いですね。

夏目漱石はジェイン・オースティンからも影響を受けていますが、それがもっとも強く出た作品がこの『三四郎』だとも言われます。

僕はオースティンも好きなのですが、本作のどこらへんがオースティン的なのか、正直いまいちわかりませんでした。

むしろ現代日本の人気作家を想起しました。たとえば森博嗣とか恩田陸のような。

主人公ら男子生徒数名、女子生徒数名、そして広田先生。この人間集団の描写やそこから発せられる雰囲気が、なんというか今っぽい。ものすごく現代的な気がします。

とくに前半パートにそれがいえますね。初々しさのある、独特な空気感。漱石ってこんな作品も書けちゃうの?と思いましたよ。

漱石ほど多彩な作家は世界広しといえどもそうはいないと言われますが、その片鱗を味わった心地がします。

残念ながら後半は平凡になっていきます。途中からはやや流し読み。しかし前半だけでも読む価値のある作品だと思う。

 

ちなみにモダニズム小説としての『三四郎』を論じた評論では、丸谷才一の『闊歩する漱石』がおもしろいです。

批評家は後期の重々しい漱石を重視しがちですが、丸谷のこの本は初期漱石に光を当て、従来の漱石像を打ち壊していきます。

文学の本

Posted by chaco