歴史学の最新動向がわかる『教養としての世界史の学び方』【書評】

2021年2月5日

歴史とは過去の事実をただ集めたものではありません。

むしろ世界を理解するための枠組みとして機能するのが歴史です。

この『教養としての世界史の学び方』は、最新の歴史学の知見を動員しながら世界史の新しい枠組みの創出を目指す本。

一般人を相手に歴史観のアップデートを迫るという、きわめて魅力的な企画になっています。

 

さまざまな内容を扱う論文集

この『教養としての世界史の学び方』という本、実態は論文集です。何人もの学者が集まり、それぞれ得意とするテーマごとに論文を収録する。

テーマは多岐に渡ります。近代の定義、ヨーロッパ中心主義、アジア史、東南アジア、アメリカ、イスラム史、市場の再定義、市民社会の再定義、宗教史などなど。

 

アジア史から世界史を再構成する

個人的にもっとも魅力的に感じたのは第4章の「アジア史から見る世界史」。

従来の世界史がヨーロッパ中心主義のもとにあるとして一刀両断し、アジア史を中心とした新たな世界史を練る構想が紹介されます。

書いているのは岡本隆司。この人は魅力的な新書をいくつも出していて、なかでも『世界史序説』(ちくま新書)は相当なレベルの良書です。

→『世界史序説』の記事はこちら

 

簡単ではないでしょうが、アジアの学者と交流しつつ新しい世界史を展開できたらすごく面白そうですよね。

哲学なんかでもそうですが、アジア圏の学者が広く交流して新しい枠組みを作っていくみたいな試みに期待したいところあります。

政治的にはなかなか難しい面もあるでしょうけれども、だからこそ学者が開拓していくべき境地があるんじゃないかと思う次第であります。

 

企画としては面白い

最新の歴史学の知見を動員し、新たな世界史の枠組みを一般人に提供するというこの企画。

ものすごく魅力的なテーマなのですが、残念ながらそれをまっとうする力は感じませんでした。

実態は論文集、しかも文章がかたすぎで、作品としての面白さがないんですよね。これでは学者とマニアしか読めないと思います。

しかし企画そのものは強力なわけで、文章をこなれたものにしつつ作品的な統一感をもたせ、タイトルをキャッチーなものに変えれば、ベストセラーも狙えると思う。

誰かこの本の志を継いで、そういう世界史の本を書いてくれないかしら…

ただ歴史の本を読み慣れている人であれば、本書も楽しく読める本だと思います。

歴史の本

Posted by chaco