講談社選書メチエの覚醒 『なぜ世界は存在しないのか』【書評】

2020年3月1日

存在するものは世界のなかに現れる。しかし世界そのものは世界の内に現れない。したがって世界は存在しない。

「なぜ世界は存在しないのか」という問いに対する、これが本書の答えです。

著者のマルクス・ガブリエルはドイツの若き哲学者。本書『なぜ世界は存在しないのか』は世界中でベストセラーになり、日本でも売れています。

 

タイトルと訳文がすばらしい

この本の最大の長所はタイトルだと思います。「なぜ世界は存在しないのか」。キャッチーかつインパクトがあり、つかみは完璧。

キャッチコピーライティングのお手本という感じですね。もっと地味で面白みのないタイトルだったら、これほど売れなかったでしょう。

そして訳文もグッド。哲学書とは思えないほど読みやすく、しかも品のある文体です。

これがたとえばカントの『純粋理性批判』(しかも岩波文庫バージョン)のような文体だったら、やはりこれほど売れることはなかったはずです。

 

講談社選書メチエの覚醒か

講談社選書メチエは、以前からクオリティの高い解説書を出すシリーズでした。とくに哲学系のレベルが高く、「知の教科書シリーズ」には僕もお世話になったものです。

ちなみに一番おすすめの一冊は清水真木の『ニーチェ』です。

この講談社選書メチエ、最近になって方針に変化が見られます。解説書だけでなく、一次文献をそのまま出版する傾向が出てきているのです。

マルクス・ガブリエルの『なぜ世界は存在しないのか』はまさにその代表例ですね(しかも売り上げ的にも成功した)。

他にもジャック・ラカンの『アンコール』などが出ていますし、最近ではギヨーム・ド・ベルティエ・ド・ソヴィニー(名前長すぎ)の『フランス史』のような大作まで発売されています。

こうなってくると、これから講談社選書メチエがどんな本を出してくるのか、非常に楽しみになってきます。