ジェイン・オースティンのロマンス批判『ノーサンガー・アビー』

2020年10月24日

ジェイン・オースティン最初期の作品『ノーサンガー・アビー』。オースティンの死後に発売された作品ですが、書かれたのは彼女の作家人生の初期の頃です。

僕が読んだのはWORDSWORTH CLASSICS(ワーズワース・クラシックス)バージョンでした。

このシリーズは古典作品を数多く扱っていて、価格の安さが魅力です。他のバージョンと比べると圧倒的に安いです。

しかしここで言っておきたい。ワーズワース・クラシックス版で読むのはやめておけ、と。

なぜか?文字が圧倒的に小さいのです。行間も詰まってページあたりに文章がぎっしり。読んでいてめちゃくちゃ疲れます。

ワーズワース・クラシックスってこんなに読みにくかったっけ…?マサイ族並の視力があるのなら別ですが、値段の安さにつられてこのバージョンを買うと後悔します。別のバージョンを探しましょう。

文章は難しいです。僕はいきなり原著に挑戦したのですが、無理した感は否めません。理解があやふやなところもけっこうありました。

最初に日本語訳を読み、作品を好きになったらさらに原著でも読んでみる。このパターンの方がおすすめです。

 

ゴシック小説のパロディ

『ノーサンガー・アビー』には何が書かれているのでしょうか?一言でいえば、ロマンス批判です。当時のイギリスで流行していたゴシック小説をパロディ化することで、ロマンス的な小説を皮肉っているのです。

主人公のキャサリンは、現代でいうところのちょっとオタクっぽい女の子。小説の世界に没頭し、現実と幻想の区別がつきづらくなっているようなキャラクターです。

正直キャサリンのこのキャラはかなり魅力的なのですが、オースティンとしてはロマンスにかぶれる読者層のパロディとしてこういう人物を書いている面があります。

物語の後半、キャサリンは自分の未熟さに気づき、分別と現実に覚醒していく。オースティンによくある主人公の成長物語ですが、その成長プロセス全体がロマンス界への批判にもなっているというわけです。

 

オースティンの文学観

オースティンの文学観は、真実の人間を書くというものでした。幻想的な世界を構築するのではなく、自分が熟知している周囲の狭い世界を題材に、きわめて現実的な物語を書く。これがオースティンにとっての小説です。

このような価値観をもつオースティンからしてみたら、ゴシック小説のようなものは受け入れがたいのでしょうね。

現代にオースティンが生きていたら、ファンタジー系の作品には背を向けるのかもしれません。指輪物語とかハリーポッターとか。

ちなみにシャーロット・ブロンテ(『ジェイン・エア』などで有名)はオースティンのこの作風を批判しています。

そういえば、身の回りの世界だけを書くというオースティンの作風は、近代日本の小説観と類似していますね。このあたりの関係性もなかなか興味深いところです。

僕は壮大で幻想的な世界観が好きなので、オースティンの文学観には組みできないですね。ただしオースティンの作品自体は好きです。

 

オースティンを理解するにはこれ

オースティンの作品を深く理解したいのであれば、廣野由美子の『深読みジェイン・オースティン』がおすすめです。この記事も本書を参考にして書きました。

オースティンの6大小説をすべて取り上げ、従来の見方とは異なる読みを打ち出す本。オースティンへの理解が多角的に深まります。