【洋書レビュー】ジェイン・オースティン『分別と多感』奥行きある良作

2020年10月24日



ジェイン・オースティン6大小説の一角『分別と多感』。オースティンの作品のなかではあまり目立たないほうかもしれませんね。僕はいきなり原著で読みました。

買ったのは『高慢と偏見』『説得』そしてこの『分別と多感』がセットになった商品です。値段が安く、ボックスもお洒落。紙媒体でオースティンの原著を読みたいという人には、超おすすめのバージョンです。

(アマゾンで検索したところ、3冊セットバージョンは見当たりませんでした。もう絶版になったんですかね…?)

文章は難しいですが、内容がどうにも理解できないというほどではなく、なんとか読み通しました。

オースティンの作品では、僕はこの『分別と多感』が『高慢と偏見』の次に好きですね。

 

主人公の姉妹が分別と多感を体現している

『分別と多感』の主人公は二人の姉妹です。姉の名がエリナ、妹の名がメアリアン。

そしてここが重要なのですが、タイトルにある分別と多感は、それぞれエリナとメアリアンを指しています。姉のエリナが分別を、妹のメアリアンが多感を表すわけですね。

普通、この作品の解釈では妹メアリアンの変化に焦点が当たります。多感で感情的なメアリアンが挫折を乗り越え、最終的には分別を備えた女性に成長していく物語が『分別と多感』だ、と。

物語後半の、挫折を乗り越えたメアリアンの自己省察と独白には独特の風情があり、オースティン作品のなかでも最も感動的な場面のひとつだと言えるでしょう。

そして最終的には分別が多感に勝利した、と解釈されるわけです。この見方では分別と多感に序列があり、分別が上位に置かれるわけですね。

 

実は姉エリナも変化している

『分別と多感』はこのように妹メアリアンの成長が目立つのですが、実は姉エリナも変化しています。

この点を指摘したのが廣野由美子の『深読みジェイン・オースティン』(NHKブックス)でした。

分別を体現するエリナは、物語が進展するにつれ内面のバランスを崩し、多感なパーソナリティを兼ね備えていきます。

廣野によると、こちらの変化こそが『分別と多感』のキモです。



姉と妹それぞれの成長

しかし僕が思うのは、分別と多感のどちらを上位に置くかというのは的を外した解釈だということですね。

むしろ分別と多感、つまりエリナとメアリアンが、それぞれ自己の対極に目覚めてゆくプロセス全体がこの作品の本質だといえるでしょう。

多感が分別へと寄っていくだけでなく、分別のほうも多感のほうへ寄っていっている。いわば分別と多感の両項がともに変化、成長しているのです。

このように見ると、オースティンの『分別と多感』は実はきわめて奥行きのある作品だということに気づきます。