ルソー問題とは何か?【一般意思の見つけ方】

2021年2月3日

大澤真幸の『社会学史』に、ルソーの一般意思についてのわかりやすい説明がのっていました。


ルソーは以下の3つの意思概念を使い分けたことで有名です。

・特殊意思
・全体意思
・一般意思

まず特殊意思。これは簡単で、個人が持つ意思のことです。こうしたい、ああしたいと、誰もがそれぞれの意思を持っていますよね。それが特殊意思です。

次に全体意思。これもイメージしやすい。特殊意思を足し算すれば全体意思になります。たとえば民主主義社会で選挙をし、多数決で意見を決める。いちばん票の多かった意見が全体意思です。

では一般意思とはなんでしょうか?

ルソーによると、一般意思は多数決で決まる共同体の意思です。でもそれって、全体意思と何が違うのでしょうか。

一般意思は共同体の意思

ルソーにはユートピア的な感性があります。原初において人間は自由であり、人々のあいだに争いはなかった、というような。

ルソーのなかでは、人間の共同体はもともと完全な一体感のあるものなのです。争いや反目は不自然なものであり、自然にしていれば完全な一体感が実現できる。

そしてこの完全な一体感をもつ共同体の意思、それが一般意思です。共同体というひとつの個体が意思をもつ。その純粋な意思が一般意思というわけです。

いわば一般意思というのはもとから存在しているのですね。それをどう探し当てるかという話になる。

バラバラじゃなきゃ一般意思は見つからない

これだけ聞くと典型的な全体主義思想のように思えますが、そう簡単にはいかないのがルソーです。

純粋な共同体の意思すなわち一般意思をどうやって見つけ出すか。ルソーはこの問いに対して、「バラバラな個人が多数決を取ることによって」と答えるのです。

一般意思をあぶり出すためには、個人は徹底的にバラバラでなくてはならない。

党派を組んだり、人に相談して意見をすりあわせたりしてはいけません。それでは僕たちの生きる民主主義社会の全体意思になってしまいます。

そうではなく、バラバラな個人がバラバラなままで意思を表明し、それを集計する。すると多数決で一般意思が出てくるというのです。

大澤はコンドルセの定理を使ってこのメカニズムを説明しています。詳しくはそちらを参考にしてほしいのですが、純粋な共同体の唯一の意思を見つけるために、個人はバラバラでなくてはいけないというひねり、ここにルソーの複雑さがありますね。


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ルソー問題

ルソーは徹底的なまでに自由主義な思想家にも見えるし、全体主義を肯定する思想家にも見える。どっちが本物のルソーなのか?

これをルソー問題といいます。

たとえばポパーはルソーを全体主義の肯定者だとして批判しています。かと思えば、明治時代の日本ではルソーが自由主義の思想家として持ち上げられました。

共同体の唯一意思を突き止めるためには個人がバラバラでなくてはならないとする複雑な論理が、このルソー問題の根元だといえそうです。

ルソー問題についても大澤真幸の『社会学史』に解説されています。

ちなみに思想家の東浩紀は、ルソーの一般意思を考察した『一般意思2.0』という面白い本を出していますね。

現代のテクノロジーを使えば、バラバラな個人の意思をそのまま集計するというルソーのアイデアが実現できるのではないか、という方向性で考えています。