うつ病がマックス・ウェーバーを覚醒させた

2021年2月3日

大澤真幸の『社会学史』を読んでいたら、ウェーバーについての興味深い記述に遭遇しました。

ウェーバーが遺した偉大な業績は、すべて深刻なうつ病にかかって以降のものだというのです。

若きウェーバーは父にならい、法学の道を進みます。

ベルリン大学で法学博士になり、30代の前半にしてハイデルベルク大学の経済学部教授に就任。

まさに大秀才という感じですね。現代でもたまにこういう凄まじい人がいます。

ただ、我々の知る天才ウェーバーはまだ現れていません。

この時点ではあくまでも秀才の範囲であり、後世まで名の残るような天才的な仕事はしていないのです。

 

ウェーバー、うつになる

ところが教授になった直後に、歯車が狂い始めます。そしてウェーバーは、むしろそこで覚醒するのです。

きっかけはハイデルベルクまでウェーバーを訪ねてきた母に、父が強引についてきたことでした。

ウェーバーは家族たちの目の前で父を糾弾したといいます。怒った父はそのまま家を飛び出しロシア旅行に出掛けるのですが、なんと旅行先で急死してしまいます。

その直後からウェーバーのうつ病が始まりました。以後、死に至るまでずっとウェーバーのうつが完治することはありません。

教壇に立つこともままならず、せっかく就任したハイデルベルク大学教授の仕事もやめてしまいました。

 

しかし興味深いことに、ウェーバーがその才能を発揮するのはここからなのです。

寝たきりになるほどの重いうつ病の合間を縫って、ウェーバーは創造性を爆発させます。

後世にまで残る偉大な仕事を鬼気迫るスピードで完遂していくのです。

どうしてこれほどの覚醒がもたらされたのでしょうか?よくわかりません。

しかしうつ病にかかった後のウェーバーは、典型的な天才の姿だといえるでしょう。

ドストエフスキーやニーチェ、日本でいえば夏目漱石など、天才的な人間は精神的な病をエネルギーに変えるという共通点があるように思います。

 

おそらくウェーバーはうつ病になったおかげでこの領域にまでたどり着けたのだと思います。

ウェーバーが病気にならなかったら、稀代の大秀才として学者人生をまっとうしたはずですが、世界的な名声を誇る天才的な作品をいくつも残すことなどなかったでしょう。

そこにどのような心理学的ないし生理学的メカニズムが働いているのかはわかりませんが、精神の病や不幸には、人の創造性に寄与する部分が確かにありますね。

ウェーバーのエピソードは大澤真幸の『社会学史』に書かれています↑

新書ながらも異様なボリュームで、社会思想の通史を一望できる良書でした。