投資入門にはこの本『ファンダメンタル投資の教科書』【書評】
投資は大まかにファンダメンタル投資とテクニカル投資にわかれます。
ファンダメンタル投資は、決算書などを活用して企業の基礎体力を分析し投資する手法。
一方のテクニカル投資は、株価チャートの動きを分析して投資をする手法のことをいいます。
そしてファンダメンタル投資の入門書として名高いのが、足立武志の『ファンダメンタル投資の教科書(改訂版)』。
今更ながら読んでみました。
非常に評判の高いテキストで、株や投資を始めるならまずはこれを読んでおけといってすすめられる本の一冊です。
改訂版では各種データが一新され、第4章「中長期で狙いたい成長株投資への挑戦」が追加されています。
大まかな構成は次のとおり。
・第1章 会社四季報の使い方
・第2章 決算短信の使い方
・第3章 バリュエーション指標の解説(おもにPER、PBR、ROE)
・第4章 成長株投資に挑戦
・第5章 どのタイミングで売り買いすればいいか解説(チャートを利用)
イメージに反して易しく親切なですます調の記述。なんとなく、もっといかめしくて難解な本だという印象をもっていたんですよね(タイトルのせいか)。
とくにPER(株価収益率)とPBR(株価純資産倍率)に関しては、僕はこの本よりもわかりやすい説明を知りません。その意味することが深く理解できます。
最後の章ではチャートの見方も紹介され、決算書とチャートを併用した投資方法が解説されます。
最後のページには「株式投資で失敗しないためのフローチャート」が載っていて、これを見ると誰でも株で稼げそうな気がしてきます(おそらく錯覚)。
僕はマルキールの『ウォール街のランダムウォーカー』を読んで以来、インデックス投資にしか興味がありませんでした。
でもこの本を読んだらチャートにも興味が出てきましたね。たぶん同じような誘惑にさらされる人は多いはず。
また本書では財務諸表の見方も解説されています。
これもわかりやすいですが、財務諸表の解説で頂点にあるのはやはり國貞克則の『財務3表一体理解法』だと思います。
バランスシート、損益計算書、キャッシュフロー計算書の3つを関連付けながら、実際に企業の財務諸表を読み解いていく本です。
そのわかりやすさはもはや伝説的。財務諸表に苦手意識のある人はぜひ読んでみてください。
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チャート分析入門には『株価チャートの教科書』
その後実際に『株価チャートの教科書』のほうも読んでみました。驚いたことにこっちのほうが面白かったですね。
大まかな構成は以下のとおり。
・第1章 株価チャートの仕組みを解説(ローソク足、移動平均線、トレンド、etc)
・第2章 買いタイミングの解説(底値圏での買い、節目超えでの買い、etc)
・第3章 売りタイミングの解説(損切り、空売り、etc)
・第4章 株価トレンド分析
・第5章 決算、増資、IPOなどへの対応策
・第6章 人気銘柄のチャートを使って本書の教えを実践
・第7章 クイズでチャート理論の復習
もっとも印象的な指摘は「素人だからこそチャートが必要だ」というもの。
なんとなくチャートってプロがやるものみたいなイメージないですかね。素人はファンダメンタルに基づいた堅実な投資をしてたほうが安全だろうみたいな。
しかし著者に言わせるとそれは逆なんですね。
ファンダメンタル分析ではプロの情報力に個人投資家はかなわない。その差を埋めることのできる武器が株価チャートの分析だと言うのです。
個人投資家がプロと同じ土俵で戦うには、ファンダメンタル分析の精度の差を埋めることのできる何かが必要です。それが「株価チャートを用いた分析」なのです。(足立武志『株価チャートの教科書』)
解説はすこぶるわかりやすく、しかも実践的です。
移動平均線に着目したトレンド分析だけに集中しているため、初心者でも頭が混乱せずにすみます。
チャート分析には謎の専門用語が山ほど出てきますが、それも本書を読めば代表的なところは押さえられると思います。
チャート入門にはまずこれを読むのがいいでしょう。
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