万葉集の入門にはこの本 斉藤茂吉『万葉秀歌』【書評】

2020年3月1日

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平成の次の元号が令和に決まりましたね。

この令和という言葉は万葉集が由来だとか。これを受けて万葉集ブームが到来、各地で万葉集の解説書が飛ぶように売れているといいます。

万葉集の解説書といえばぜひともおすすめしたい本があります。それが岩波新書から出ている『万葉秀歌』。

大正~昭和前期の日本を代表する歌人、斎藤茂吉による万葉集入門です。

万葉集をぜんぶ読むのは大変

万葉集はその分量が尋常ではありません。収録されている歌は4,500首を超え、巻数は20に及びます。これをぜんぶ読むのは大変でしょう。

実際、僕もぜんぶ読んだことはありません。老後の楽しみに取ってあります。

ぜんぶ読むのは現実的じゃないけど、いいところだけつまみ読みしたい。ということで、斎藤茂吉の『万葉秀歌』の出番なわけです。

この本は万葉集のなかから斉藤が選んだ歌を約400首収録したもので、いわばベストアルバム的な存在です。

斎藤は超一流の歌人ですから、彼がピックアップした歌なら信頼できますね。

まあ、そもそも万葉集自体が古代の優れた評者によって選抜されたベストアルバム的な作品ではあるのですが…(笑)

さてこの『万葉秀歌』の構成ですが、まず歌が引用され、その次に斎藤の注釈が2ページほど入ります。

歌だけ読んでもいいですし、斎藤の美文を読むのもまたいい勉強になりますよ。

僕は批評や評論を読むのが好きなので、斎藤の文章も楽しく読みました。

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斎藤茂吉という人

斎藤茂吉はとても変わった経歴の持ち主です。

山形県に生まれ、東京帝国大学の医学部を卒業。その後は精神科医として精神病院に勤めていました。

精神科医が詩人でもあるというのは、かなり珍しいですよね。斎藤のなかでこの二つがどうつながっていたのか興味深いところです。

文学者の中野重治によると、斎藤の歌はどこか哲学的なトーンが強い点に特徴があるそうです。

哲学的な色調の強い中国の文学に対して、日本の文学は古来そのような性格がありませんでした。

斎藤茂吉はその点でも、かなり異色の存在だといえるでしょう。

斎藤茂吉というとなにか情緒的なイメージを持つ人が多いかと思いますが、彼の本質はむしろ、エモーショナルな日本的和歌の世界を知的反省によって拡大せしめた点にあります。

ここらへんの分析は加藤周一『日本文学史序説』の下巻がおもしろいです。

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