佐藤優『ゼロからわかるキリスト教』なぜ東大には神学部がないのか【書評】

2020年10月24日キリスト教

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佐藤優の『ゼロからわかるキリスト教』を読みました。

この本でもっとも興味深かったのは、東京大学の西洋古典学科の成り立ちについて解説されたところ。

第二次世界大戦の終結後、GHQは日本にキリスト教を根付かせようとします。「キリスト教がなかったからこんな野蛮な戦争に突き進んだのだ」という判断があったそうです。

その判断が妥当かどうかは置いておきますが、とにかくGHQは行動を開始し、日本の大学にキリスト教学科を作ろうと画策します。

しかし東京大学はこれに反発。「占領軍に押しつけられたキリスト教学科なんて必要ない」と抵抗したといいます。

それでもアメリカの圧力はやはり強力でした。そこで妥協の末に東京大学が新しく創設した学科が西洋古典学科です。名前は西洋古典学科ですが、その実質は聖書の研究にあります。

そして興味深いのは、この西洋古典学科が無神論的な観点から聖書を研究しているという点。やはり学科の成立過程が影を投げかけているのか、どこか批判的なアプローチをとるのですね。

 

東大の西洋古典学科の出身者にはたとえば荒井献という人がいますが、この人の宗教学書を読んでも、どこか冷めたトーンが伝わってきます。キリスト教や宗教に対する情熱のようなものが感じられず、第三者的なトーンが支配的なんですよね。

それをいぶかしく思っていたのですが、今回この『ゼロからわかるキリスト教』で東大の聖書研究の成立過程を知って、色々と腑に落ちるところがありました。

 

著者の佐藤優は元外交官の作家でキリスト者。同志社大学1年生のときに洗礼をうけたそうです。

この人はほぼ超人ですが、こういう細かい事実を語らせたときがもっとも輝くと思います。理論的な話をすると、意外とふつうなんですよね。

ほとんど知られていないような客観的な事実を細かく説明する場面がいつもおもしろく、夢中で読んでしまいます。このへんは元外交官としてのセンスなのかなと感じます。